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第三落暉

第三落暉

 高度文明の再崩壊から百六十年弱。かつての大戦期に築かれた旧時代のジオフロント跡地に建つ混沌の街・ウロイエで、偽名を名乗る二人の男が睨み合いながら暮らしている。

 十字架を提げた暗殺者『カール・エンデ』は煙草に火をつけながら嗤う。
「ネヴァは俺の知りてぇことを知ってるはずだ。俺にはそいつを吐かせる必要がある」
 灰色の髪を持つ便利屋の少年『ネーヴェル』は顔を伏せて吐き捨てる。
「あいつを放置しちゃいけないんだよ。あいつが俺の予想通りの存在なら――いつか、必ず、大変なことになる」

更新履歴

2024/01/21

落書き4枚追加。

2023/10/25

イラスト1枚加筆修正につき差し替え。

2023/07/31

イラスト1枚、落書き1枚追加。

2023/04/10

イラスト1枚追加。

2023/03/17

落書き3枚追加。

2023/03/12

設定の一部を仮置き。

2023/03/05

ログ公開。

本編

※新規更新は赤枠で表示されます。

準備中

登場人物

主人公

  • カール

  • 『カール・エンデ』

    "Karl Ende"

     傭兵集団バーゲストに所属する隻眼のチンピラ。本名不明。別名『ネロ』。
     狙撃をはじめ銃器による暗殺を得意とすることで知られる。常に身に着けている銀色の十字架のペンダントをして、警察やメディアから『銀十字』と呼ばれている。

     独自の倫理観に基づいて行動する極端な利己主義者。他者評価は『面白い』か『ゲス』かで二分される。
     何らかの目的からネーヴェルに執着し、周辺を嗅ぎまわっている。相互ストーカー状態にある。

  • ネーヴェル

  • 『ネーヴェル』

    "Nevel"

     素性不明の少年。便利屋業で日銭を稼いでいる。
     身体能力が極めて高く、傷の治りも異常に早い特異体質。年齢も見た目通りではないようだ。

     人の死に対する忌避感が極めて強い。殺傷力の高い兵器を疎むが扱いは何を持っても達人級。グレイヴという片刃の長柄武器を愛用する。

     抑うつ的で人との関わりに消極的。怒らない限りは口数少ない。短気。
     何らかの目的からカールに粘着し、つけまわしている。相互ストーカー状態にある。

バーゲスト

  • ディートリヒ

  • ディートリヒ・グロスマン

    Dietrich Grossmann

     傭兵集団バーゲストの頭領。
     組織の運営・人事・営業を主に行っており実戦に出てくることはほぼ無いが、組織内屈指の極めて高い身体能力と戦闘スキルを有する。

     ネクロフィリアかつロリコンの元墓荒らし。盗んだ遺体の防腐処置用の薬品等を得るためにマフィアの鉄砲玉となって暴れ回り、それとは無関係に墓荒らしで逮捕され、脱獄して逃走・潜伏していたところを彼の能力に目を付けたとある諜報組織に拾われ暗殺者として活動していた過去を持つ。

     美形。

  • ハインリヒ

  • ハインリヒ・ヴィルシュテッター

    Heinrich Villstetter

     傭兵集団バーゲストの一員であり、最古参かつ組織創設時からの最初期構成員。
     刃物と毒物の扱いを得意とし、近接格闘に秀でる。病的なチェーンスモーカーなので隠密行動には不向き。

     マフィア幹部の家系に生まれた6人兄弟の末子。『戦い方を学ばせる』ことを名目に組織間のパワーバランス維持のため身売り同然に他組織に送られ、ディートリヒの部下となった。

     カールとは先輩後輩の関係であり、私的な友人でもある。

  • カーク

  • カーク・イーリィ

    Kirk Ely

     傭兵集団バーゲストの一員。
     最年少の新人ながら卓抜した狙撃の才を持つ。狙撃の上手さで名の知れた『銀十字』にバーゲスト加入以前から憧れを持っており、カールを尊敬している。

     以前は親の借金を発端として弱小マフィアの元で雑用係をやっていた。

  • マクシミリアン

  • マクシミリアン・クルツバルス

    Maximilian Kurzbarss

     傭兵集団バーゲストの一員。弟ネルソンと共に組織入りした比較的新入りの構成員。

     以前は紛争地帯で活動していた傭兵だった。都会にもアウトローのノリにも慣れていない。

  • ヨシロウ

  • ヨシロウ・キジマ

    木嶋 世支郎

     傭兵集団バーゲストの一員。
     隠密行動を得意とし、あらゆる仕掛け・手法・状況を駆使して人知れず『暗殺』を行う。

     サカキバ組の組員と兼業している。

フロイデンタール市の人々

  • シノ

  • シノ・リョーゴク

    両国 志之

     ウロイエA区東部にある『リョーゴク古書店』の店主。フリーの情報屋も兼業している。

     カールとは友人関係にある。ネーヴェルの素性を探るよう依頼されている。

設定・用語

舞台

時代

 地球暦(A.O.)156年。西暦では2801年。

 度重なる世界大戦によって土地が汚染され文明も退行している。最後の大戦から150年経っており概ね安定した社会が築かれている一方、世界政府からの離脱を掲げる地方・集団による紛争は各地で発生し続けている。

フロイデンタール市

Freudenthal

 世界政府アルスリニア連邦の直轄自治区であるネストリア州東部に位置する地方都市。

 23世紀の宇宙大戦時に破壊され機能喪失したジオフロント『フロイデンタール生存基地』の遺構を基礎として築かれた。地上部に限るならば農地と森に囲まれた長閑な町であり、市街の東部に沈む広大な遺跡群の一部は観光地として開放されている。近年は遺構の老朽化による崩落事故の多発や他方から流れ着いて数を増やしつつある人工害獣による被害の増加、加えて地下街の悪評により、観光客が減りつつある。

 公用語は英語。元々はドイツ語圏の土地であったためそちらの話者も多い。また、他の言語を使用する民族集団のコミュニティも複数存在する。

ウロイエ街

"U-Reue" Unterirdisch Reue

 フロイデンタール市の地下に広がる街。正式名称はフロイデンタール地下街。旧ジオフロントの一部を150年前の第二次終末戦争後に再整備し開拓された。

 公的には12の区画がある。区画はA~Lのアルファベットが振られて区別され、そのそれぞれで階層の数や街の様相が異なる。天井が開口している地区や内部で地上と直結している建物もあり、どこからが地下街とされるか曖昧な区域も存在する。

 基礎となったフロイデンタール生存基地遺構は、破壊されてから戦後の長い混乱期が終わり再整備が行われるまでの数百年間、地球衛星軌道上・月面・火星圏の宇宙植民基地やジオフロントに入ることができず汚染された地上に取り残されていた人々によって利用されていた歴史がある。当時この地区は『ロイエンタール地下市』と呼ばれ、マフィアのような組織の混在する民衆の徒党によって自治されていた。A.O.90年代に現行政の手が入りマフィアらは駆逐され、地下街は住宅地として再開発された。しかし再開発区画外に住み着いていたロイエンタール地下市住民の生き残りやマフィアの残党を嫌って外部の一般層がなかなか寄り付かずゴーストタウン化。空いた土地に外資系巨大犯罪組織関係者が流入し、それらに古巣を荒らされることを嫌った古参のマフィアが出戻って大抗争が勃発。彼らが呼び込んだ『兵隊』や抗争を利用して稼ごうとした犯罪者らが世界中から集まったため急速に犯罪都市化が進んだ。抗争を生き残ったマフィアらは停戦協定を結び、それぞれの縄張り内の住民に手を差し伸べて取り入り土地に深く侵食。現在では面積の半分近くが何らかの非政府組織の支配下にあり、警察も介入できない魔窟ながら一定以上の治安が保たれている。

 マフィアらは旧住人におもねって土地を『ロイエンタール地下市』と呼び習わし、それが詰まってロイエ地下街となり、更に略されて『ウロイエ』の通称に至った。現在『ウロイエ』の名は世界的に広く知られている。マフィア系や新規移住者は『ウロイエ』、公的機関や反マフィア系市民は『フロイデンタール地下街』、旧住民の末裔は『ロイエンタール』と、それぞれの思惑によって異なる呼び方をする。

組織

ウロイエ協議会コミッション

 ウロイエにおけるマフィア・ヤクザ等の犯罪組織が個々の縄張りを維持し円滑に仕事をするための平和的交渉手段として、定期的または緊急に行われる密会、およびそれを開催する連盟の通称。

 定例会は最低参加席数が決められており、『議席』と呼ばれる。街の有力組織が議席を保持する『常任』に名を連ねている。常任組織の定例会参加は強制で、欠席すると協議会内の地位に応じたペナルティを受ける。席を持たない外部組織がウロイエ内で問題を起こすと強制召喚される場合があり、応じなければ全常任組織による攻撃が行われる。協議会の承認を得ない常任組織間の攻撃行動は取り決めによって禁忌とされる。

 A.O.156年時点で参加している常任組織は、『フェロネッタ』『ユニオン・バズ』『ジノヴィエフ・ファミリー』『ゴーティエ・ファミリー』『三義幇サンイーパン』『榊葉サカキバ組』『テトラーゼ・ファミリー』『バーゲスト』の8組であり、それらの下部組織・関連組織が場合に応じて集合する。

 基本的に彼らが求めるのは街の進歩でも衰退でもなく、安定した現状の維持という名の停滞である。

バーゲスト

BARGUESTS

 ウロイエを拠点とし、ディートリヒ・グロスマンが統率する傭兵集団。暗殺をはじめ、少数精鋭での荒事を請け負う。自他共に『殺し屋組織』という認識を持つ。構成員は十数人程度。

 ウロイエ内のマフィア及びヤクザ系組織以外で唯一ウロイエ協議会に議席を持つ。協定により協議会の常任組織は彼らを常任組織間における抗争には利用せず、バーゲスト自体も常任組織関係者に危害を加える行動は起こさないことを確約している。

 拠点はディートリヒの住居と共に不定期に移動する。中央には必ずディートリヒの私物である悪趣味なラウンドテーブルが置かれるため、『円卓室』と通称されている。

ジノヴィエフ・ファミリー

 ウロイエ協議会の常任組織。世界連邦首都ゼルタに本部を置く大規模組織。

 元は第二次終末戦争で犠牲となったとある兵科の軍人とその親族を支援するための組織として発足した。経年によって支援対象がいなくなり存在理由を失ったが地域に根付いてしまったために解体を惜しまれ存続し、時代と共に変質。現在は海千山千の反社会的地方自治集団の一となっている。

 世界各地に支部を持つが、ウロイエ支部が最も規模が大きく攻撃的。